
「都市ブランディング」という言葉が少しずつ広がっています。 少子高齢化や人口の動き、暮らしのかたちが変わっていく中で、ただの“都市開発”では、人の心には届きにくくなっています。
都市が「選ばれる存在」になるためには、便利さだけでなく、そこで過ごす時間や心の風景がどんなものか──そんな“感情の景色”を丁寧に描くことが大切です。
今回は、「地域ブランディング」との違いにふれながら、都市ブランディングの可能性について、やさしく紐解いていきます。
地域ブランディングと都市ブランディングの違いとは?
地域ブランディングは、特定のエリアや文化圏、自治体を対象に、その土地らしさや暮らしの営みをやさしくすくい取る取り組みです。
一方で、都市ブランディングは、産業や交通、文化、行政など、街のさまざまな側面を見つめながら、全体としての「都市らしさ」を編んでいくような営みです。
項目 | 地域ブランディング | 都市ブランディング |
---|---|---|
フォーカス | 土着の文化、人々の生活感 | 都市の多様性やつながり、経済・文化の広がり |
主な対象 | 地方、農山村、特定の集落 | 政令指定都市、中核市、国際都市 |
アプローチ | 内から芽吹く(住民参加・共感性重視) | 外と内をつなぐ(行政や民間の連携も含む) |
都市ブランディングの3つの視点
都市ブランディングを考えるうえで、やさしく見つめたい3つの軸があります。
①産業とのつながり
- 地元の産業や新しい挑戦が、街の個性を形づくります。
- 都市の「らしさ」は、働く人たちの想いからも生まれます。
②文化を育て、伝える
- 歴史や芸術、食や建築など、そこで育まれてきた文化の温度感をどう伝えるか。
- 「物語がある都市」は、人の心をふわりと引き寄せます。
③暮らしの共感価値
- 市民にとって「好き」と感じられる日常があるかどうか。
- 外から訪れた人が、「ここで暮らしてみたい」と感じるきっかけがあるかどうか。
なぜ今、都市も「感情設計」が必要なのか?
これまでの都市づくりは、「便利さ」「大きさ」「整備された機能」といった目に見える価値が中心でした。
けれど今は、
- どんな風景が心に残るのか
- どんな出会いやつながりがあるのか
- どんな未来を一緒に描けるのか
そんな“ひとの気持ちに寄り添う都市”が、選ばれる時代になっています。
「感情設計」とは、「安心」「誇り」「共感」の3つからなっています。
都市と人との関係性をていねいに紡いでいくこと。 住民も観光客も、企業も行政も、それぞれが主役になれるような舞台を整えていくこと。 それが、これからの都市ブランディングに求められる姿だと私たちは考えています。
▼感情設計について詳しくはこちら
神戸市における都市ブランディングの可能性
私たちの拠点である神戸は、
- 海と山が寄り添う、自然に抱かれたまち
- 異文化が交わり育った、開かれた歴史
- 阪神淡路大震災から立ち上がった、やさしい力強さ
こうした、心に残る“ブランド資産”をすでに持っているまちです。
ただ、その魅力を日々のことばで伝えられるような「物語の設計」が、まだ十分とは言えません。
いま大切なのは、「共につくる」こと。 行政や企業、まちで暮らす人々が、想いを重ねながら、「神戸らしさ」を育てていく時間と場が必要です。
Spinning Moonの考える“共創型都市ブランディング”
Spinning Moonは、 誰かが決めた「形」を押し出すのではなく、 「どんな未来を、誰と歩むのか」という問いに寄り添うブランディングを大切にしています。
- 日々の暮らしに根ざす、小さなストーリー
- 市民の感性にひびく、未来へのビジョン
- 部門を超えて想いをつなぐ、共通言語のデザイン
そういった“育てていくブランディング”を、ていねいに進めていけたらと願っています。
おわりに
都市もまた、人と同じように「らしさ」を持っています。 それは、誰かが一方的に決めるものではなく、いくつもの視点が集まり、時間をかけて育まれていくものです。
Spinning Moonは、神戸というまちの「根っこ」にそっと耳をすませながら、やさしく、しなやかな都市ブランディングを共につくっていきたいと考えています。